穏やかな自然現象と慣性について
人は常に自己を基準にして周囲との差異を計る生き物であるが、例えば山岳や海洋などの恒久的なものに対峙したときには、あまりに数値の大きい相手を前に、自己を度外視した客観的な活動がはじまる。
それらはつまり人に比べて時間のスケールが膨大なものということであるが、時間のスケールは「繰り返し」や「永久」という概念によっていとも簡単に無限大になるため、そのような状態をあからさまに示すものにも同じような効果を期待できる。
時間のスケールが膨大であるそれらと対峙した際の客観的な活動の中では、自分自身も観察の対象となり、思考を自らの内部に向かっても歩ませることができる。人が時に街を離れ山岳や海洋と向き合うのは、その先に自分がいるからということもあるのだろう。